#映画

映画『ちょっと思い出しただけ』―題名通りのえも映画にちょっと嫉妬だった

2022年7月26日 

ややネタバレあります

映画監督の松居大悟さん×クリープハイプの尾崎世界観さん×俳優の池松壮亮さんが再び(三度??四度??)タッグを組んだ映画『ちょっと思い出しただけ』観ました!!

あらすじ

2021年7月26日、この日34回目の誕生日を迎えた佐伯照生(池松壮亮)は、朝起きていつものようにサボテンに水をあげ、ラジオから流れる音楽に合わせて体を動かす。ステージ照明の仕事をしている彼は、誕生日の今日もダンサーに照明を当てている。一方、タクシー運転手の葉(伊藤沙莉)は、ミュージシャンの男を乗せてコロナ禍の東京の夜の街を走っていた。目的地へ向かう途中でトイレに行きたいという男を降ろし、自身もタクシーを降りると、どこからか聴こえてくる足音に吸い込まれるように歩いて行く葉。すると彼女の視線の先にはステージで踊る照生の姿があった。

―公式サイトより一部抜粋

これまでも『自分の事ばかりで情けなくなるよ』(2013)や『私たちのハァハァ』(2015)などなど、クリープハイプの楽曲やライブなどを原案に作られ池松壮亮さんが出演した映画はあるのですが、今回は「本作は自身(尾崎世界観)が作詞作曲した主題歌「ナイトオンザプラネット」をもとに松居大悟監督が書き下ろした物語である。(パンフレットより)」ということで音楽色の強かった過去作よりはストーリー性が強くなっているのかもしれません。

本作のいちばんの原案になるジム・ジャームッシュの
映画『ナイト・オン・ザ・プラネット』(1992)

あと特筆すべきなのは2021年7月26日から照生の誕生日を遡っていくお話なので必然的にコロナ禍が主軸になること。どんなに親しい間柄でも人間と人間が物理的に距離を置かざるを得なくなった時代。コロナ禍の捉え方も徐々に変化しつつあり、第7派(BA.5)にあたる今現在では東京都でも毎日3万人の感染者数が当たり前のようになっていますが、緊急事態宣言や要請が出るでもなく(出るかもしれませんが)本格的に夏休みに入ったこともあって各地での人出は例年の第何波と比べると増えてきている(≒通常の生活に戻ってきている)ようですね。それでも感染者数の急激な増加を受けて自主的に各種恒例の行事を中止にしている動きもありますので、未だ不安が拭えない日々を我々は過ごすことになるのでしょう。

私にはちょっと眩しすぎた

実は上映開始後すぐに映画館にて鑑賞しました。なぜ既に円盤化が進んでいる頃にこうして感想を書いているかというと、恋愛経験がなさすぎる私には「眩しすぎた」作品だったからです。はっきり言うと「(恋愛において)ちょっと思い出すことがない」という悲しい人生経験により強い共感やエモさみたいなものを感じ取りきれなかったというのが本音でした。もちろん人並みに片思いみたいなのはありますが、主人公である佐伯照生(演:池松壮亮)と野原葉(演:伊藤沙莉)ほど深い関係性で思い出せることは皆無なので、作品がどうとかではなく私の問題です。そのため主人公である2人の気持ちを汲み取れなかったり、わかるなぁという共感がかなり少なかったためにリア充向けエモーショナル作品だったという感想でいったん終わってしまっていたというのが率直なところでした。

ブラは外すけど アレは付けるから
全部預けて

クリープハイプの『ナイトオンザプラネット』の歌詞に上記のようなフレーズがあるのですが、私…ブラしてない…と思ってちょっと悲しくなりました。要らない捕捉ですが私めは超ド貧乳なのでUNIQLOのブラトップ(夏はエアリズム、冬はヒートテック)だけで充分です。

ダンスの夢があり、それが葉との出会いのきっかけでもあった照生はプライドもあったのか、脚の怪我によってダンサーとしての道を諦めなければならないという決断を迫られてしまった2人の将来についてかなり寄り添ってくれている葉に対して自分から素直になれず関係性を正せなかったところが垣間見えました。葉には「来年の誕生日にプロポーズしようかな」というようなことも言っていましたが、もともと結婚願望みたいなものも強くなかったのかもしれません(完全な私見)。いつもふざけあっていることが、ひとつの壁(≒現実的な将来)みたいなものから2人を遠ざけ2人を繋ぎとめていたのでしょう。

主演や助演の安定感と安心感

予告編などが続々と出てきた時には『花束みたいな恋をした』(2021/土井裕泰監督)『愛がなんだ』(2019/今泉力哉監督)などなど、いっときミニシアターのブームっぽくなっていた「過去の恋愛や失恋の思い出」系映画なのかなと思っていました(←公式サイトの松居監督の自虐が入っている風コメントが申し訳ながらおもしろいです)。実際確かにそれ系ではあったのですが、配役を狙いすぎてしまうとややもすれば薄っぺらい陳腐な感じの恋愛映画になりやすい難しいジャンルのような気もするなかで主演2人の"なんか絶対大丈夫"感は鑑賞する前からびんびんでした。

他の方にはどう見えたのかはわかりませんが、照生がいい感じにクズだったなあというのがいちばん印象に残ってしまいました。

他にも「あっ」と思えるキャスティングで観ていて楽しかったです。照生の長く結んだ髪をバッサリ切ってくれた散髪屋の主人は『ボクたちはみんな大人になれなかった』(2021/森義仁監督)にも出演していた篠原篤さん、前述の『私たちのハァハァ』にさっつん役として出演していた大関れいかさんもいましたね。ドラマ『M 愛すべき人がいて』(2020)に出演したことで注目度が高まった安西かれんさんも葉が運転しているタクシーの乗客役として出演。彼女の雰囲気は『プラトニック・セックス』(2001/松浦雅子監督)の時の加賀美早紀さんと似ていてギャル系メイクも映える可愛らしい女性だなと感じます。

國村隼さんや永瀬正敏さんなどベテラン俳優も出演していますが、物語においてキーパーソンになるとかそういった役どころとも違う気がする。けれども少なくとも照生と葉にとって必要な出会いであり重要な人物であることは伝わってきます。敢えて物語の鍵を握る的な存在なのは映画の原案でもあるクリープハイプの尾崎世界観さん演じるミュージシャンの男役ですが、バタフライエフェクトのような分岐点が受け手にわかりやすく練られていない方がヒューマン系の物語の場合は自然で好きです。

松居監督との劇団「ゴジゲン」でもお馴染み目次立樹さんも泥酔したタクシー客として出演していました。松居監督とともに今期(2022年4月)からの『おかあさんといっしょ』の人形劇「ファンターネ!」の原案や脚本も担当とのこと、幼少時に「にこにこぷん」で育ったであろう同世代からすると感慨深いものがあります。頑張ってください!!

前作の『くれなずめ』(2021)から再び松居監督作品に出演した成田凌さん(フミオ役)は結局主人公である照生とどの程度の関わりの人物なのかわからないままでしたが、泉美(河合優実)を置いてけぼりにしてアドリブ調で照生と掛け合いを始めるシーンは普通の日常を切り取った感じがとても自然で心地良かったですね。池松壮亮さんとの共演は『カツベン!』(2019/周防正行監督)以来かもしれませんが、成田凌さんを映画などでよく見るようになってから「この2人って何となく映像の中での存在感というか雰囲気が似てるよなあ」という気がしてなりません。言葉を選ばずにもっとはっきり言うと「女性に対して割と残酷な優柔不断なことをさらっとやる」「けど憎めない」感じかもしれません。人間の本質とかそこまでおおげさな言葉を使わなくても「人間」という生き物を演じるのが自然にできてしまう方たちなんだろうなというのが最近感じている魅力のひとつです。

終盤はちょっと裏切られた

最後は照生と住んでいたアパートよりはいい感じのマンションで葉がベランダで黄昏ているのですが、彼女が希望していたような家庭を築き小さい赤ちゃんの母になっていました。しかし父親は照生ではありません。赤ん坊を抱いて現れたのは照生と別れてからナンパ??されてそのまま流れでヤってしまった(表現が悪いですが私は概ねこんな感じに捉えました)康太(屋敷裕政/ニューヨーク)です。

最終的に軽い感じの男性と流れでヤる感じに(また安っぽい風のラブホというのが妙なリアル感)なってしまうという、照生と葉のバカップルぶりと比べると捨鉢に身を委ねちゃったのかなぁと不安になる展開ではありました。口では「真剣だから」と言ってはおりますが「本当だろうな」とつい親目線になってしまうも、照生よりも甲斐性は断トツに上だったという現実的な結末。けれどもカップルが普通に同棲して普通に結婚する物語というのも「だからなんなんだ」ともなりそうで、現実的な障壁や普通の生活というものを作品として描くことの難しさを感じます。

映画の外のおばさん(私)は「葉ちゃん!!本当にそれで良いの⁉良かったの⁉」と思ってしまったのですが(屋敷さんには本当にすみません)、昨今ではちょっと時代錯誤な価値観かもしれませんが「結婚するなら2番目に好きなひとが良い」などの教訓も聞きますし、理想に縛られたまま身動きが取れなくなってしまった照生よりは一見どうしようもなさそうな男でもいざとなればきちんと向き合ってくれる男性の方が女性、とりわけ葉ちゃんにとっては良かったのかもしれません。康太も頭にはてなマークが浮かんでいましたが、やっぱり元彼の誕生日にわざわざケーキは買わないかなぁと思いつつも「ちょっと思い出しただけ」で葉にとっては匂わせとか他意はないのです。

ダンスから離れた照生は照明技師として裏方で舞台を支える仕事に転向しましたが、そこでも頼りになって尊敬できる先輩である牧田(市川実和子)と新たな出会いがあったりと全く孤独の淵に立たされたというわけでもなさそうです。彼にとっても次の未来があって、葉との思い出は過去のことなのですが未練的なものはなんとなく照生の方が強そう。

沙莉ちゃん提案の"引き止めてくれない"男

映画『ジョゼと虎と魚たち』(2003/犬童一心監督)にもちょっと似たシチュエーションがあります。足が不自由でありながら祖母が亡くなってしまった今後の生活のことで恒夫(妻夫木聡)と口論になったジョゼ(池脇千鶴)の「帰れって言われて帰るような奴は早よ帰れ」と言って泣き崩れるという超印象的かつ話の流れ的に心打たれるシーンなのですが、葉が照生を無理やりタクシーから追い出して「追いかけてこいよ(正確な台詞はうろ覚え)」とひとり怒りと落胆に駆られている点は私の頭の中でリンクした感がありました。

照生は足を怪我していたので走り去っていくタクシーを追うことはできないのですが「それくらいやってみせてくれよ」という女性的??な感覚はさすがの私でも共感でした。男性は「帰れ」「降りろ」と言われたらそのまま言葉の通りに受け取る、女性は怒りと悲しみが頂点に達した際に「帰れ(帰らないで)」「降りろ(降りないで)」という裏コードがあるので、こと男女のコミュニケーションにおいては古代から未来永劫に完全に理解し合えることはないのだろうなと悟りの境地です。

* * *

もはや「おかあさんといっしょ」だけでなく「日活ロマンポルノ」も手掛けてしまうという、ある意味全年齢を対象にできる活動で躍進中の松居大悟監督。俳優としての池松壮亮さんもミュージシャンとしての尾崎世界観さんもそれぞれの分野で切磋琢磨している感じがするというか、この作品自体が3人のこれまでの青春の軌跡のようなものを詰め込んだようなところがあってメタ的にも"えも"い不思議な映画だなと思います。監督自身は今になると納得いかない演出もあったみたいですが『自分の事ばかりで情けなくなるよ』も『私たちのハァハァ』もまだ観ていない方は年数の経過も感じながら観るのも更に興味深いと感じるのでおすすめです。

照生くん誕生日おめでとう!!

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