#音楽

変態性を刺激するロックバンド『スピッツ』を語る

2020年8月8日  2019年12月26日 

令和に入って衝撃の邦楽ニュースがあった。
(格好つけて文体は常体)

既に1億回再生を突破している曲はいくつかあるが、約四半世紀前の曲がYouTubeという90年代には存在しなかったプラットフォームで再び記録を塗り替えるというのは驚きだった。

私自身バンド経験があるわけでもなく音楽は学校の授業で習ったきりのレベルなので専門的な知識は皆無だが、ある時インディーズロックバンドの経験がある友人が「何も知らない素人だからこその着眼点がある」と言ってくれた事に甘えて自身の好きなバンドサウンドについて生意気にも語ってみたいと思った。

音楽バンド『スピッツ』の印象

ブレイク当時のスピッツはどうしても同じ編成のミスチルと比較されたり混同されがちな印象が強く、新曲が次々とミリオンセラーになるミスチルと比べるとスピッツは子供心に少しおとなしく見えていた。

正直言うと、代表曲の『チェリー』(1996年)や『涙がキラリ☆』(1995年)などは当時小学生だった私はあまり好きではなかった。音楽番組やランキングが盛んだった90年代では毎日のようにテレビでもヒット曲が紹介されていたが、この頃のスピッツはロックバンドというよりは完全にポップス寄りで、当時全盛だった音楽バラエティ番組にも今では考えられないくらいには出演はしていて時代のニーズに寄り添っているようにも感じた。

あの『ロビンソン』(1995年)ですらフジテレビで放送されていた「今田耕司のシブヤ系うらりんご」というバラエティ番組のエンディングテーマに採用されていたという印象で、当時はもちろん今となっても大ヒット曲には間違いないのだが当時から比較対象になりがちだったMr.Childrenやエレファントカシマシなどと比べるとヒット曲を飛ばすバンドの中のひとつといった印象で、やはり地味さはあった。

今でこそ主流になりつつあるが、男性バンドでありながら当時から特徴的だった中性的な出で立ちと繊細なサウンドは異色でサブカル的な存在に拍車をかけているとも感じていた。

変態的ロックバンドとしての『スピッツ』を知る

私の中でスピッツの印象が大きく変わったのは自身が高校生の頃だった。2000年代にもなると大衆の趣味や価値観も多様化して分散するようになり音楽の在り方も変化した。まだパソコンの通信や処理速度は遅くガラケー最盛期の時代なので現代のようにネット上で気軽に音楽を聴くという習慣もなかった。定額制のデジタル音楽配信サービス、いわゆるサブスクリプションなどもちろん存在していなかった。
米津玄師もハチ名義でボカロPとして活動していたニコニコ動画が第一線になるのも数年後なので、私個人としてはプロデビューしていないミュージシャンの曲を聴く機会はそう多くはなかった。

そうなると稀に友人との共通の話題になるのが懐メロ系で「あんな曲が好きだった」「こんなアーティストが好きだった」という話をする事もあった。そこで私はふと『ロビンソン』が頭をよぎり、バンド名も曲名すらも覚えていなかった私は友人に「あの昔のバンドでルーララって歌ってるの好き」と抽象的に話を振った。すると友人はすぐに「スピッツでしょ?ベストあるから貸したげる」と言って学校に持ってきてくれたのはよく覚えている。

このベスト盤こそ後に「マイアミ・ショック」事件※1として語り継がれる事になる『RECYCLE Greatest Hits of SPITZ』(1999年)な訳だが、何の気なしに借りてひと通りそれを聴いた私はそのアルバムを大層気に入った。よくよく聴いているとタイアップ曲が多く、『夢じゃない』(1997年)はテレビ朝日で放送されていた連続ドラマ「ふたり」、『』(1998年)は今でもTBSで放送している「COUNT DOWN TV」など当時のてれびっこなら必ず耳にした事のある旋律が多かったのもすぐに馴染めた理由なのかもしれない。コマーシャルでも頻繁に使用されていた曲もすぐにわかった。

あの頃はこうだったなと若干のノスタルジーに浸りながら当時主流になりつつあったMDを持っていなかった私はカセットテープに録音して繰り返し聴いていた。そして友人にスピッツのサウンドを痛く気に入った事を語ると、『ハチミツ』(1995年)『フェイクファー』(1998年)とクラスメイトが有名どころのアルバムを貸してくれた。TSUTAYAでレンタルするのが当たり前だったあの頃はお金がない学生は友人間でアルバムの貸し借りをするのが日常だった。

当時はYouTubeで気軽に公式MVを観られる環境下になかったので、『ソラトビデオ・カスタム』(2001年)というビデオクリップ集のDVDを購入してテレビを独占できる深夜に再生しながらだらだらと勉強していたのも青春の思い出のひとつである。

そうした中で私が驚いたのは当時のアルバムにいわゆる「捨て曲」がなかった事だ。

ファンは思っていてもあまり公に言わないかもしれないが、やはりどんなアーティストでもオリジナルアルバムが出てひと通り聴いてみると1曲や2曲は「これは違う」とスルーしてしまう曲がある。しかし『ハチミツ』は導入から終わり方までセットリストは完璧だと感じた。何よりそれまで想像していたスピッツ像よりもエッジの効いた歌詞と自由でのびやかなメロディがより一層「このバンドの音楽性を知りたい」と思わせてくれた。

そしてまずはファーストアルバムだろうと思いながら『スピッツ』(1991年)や『惑星のかけら』(1992年)などを立て続けに手に取ったのだが、これにはまた違う衝撃を受けた。
当時のセールスとしては芳しくなかったらしいが、全体的に気怠く埃っぽい(グランジっぽい)のにどこか斬新で飽きがこないという唯一無二の世界観だと感銘を受けたのはよく記憶している。デビュー直後という事もあって素人にもわかる荒削りな歌声とこもったサウンドがより一層若さゆえの鬱屈さを引き立てる魅力になった。初期はロックやポップというよりはパンク調で、ちょっとガチャガチャしていたり歌詞の雰囲気も20代にして既に無気力で悟りを開いてるような印象も受けた。

そこから順当にレンタルショップに赴いたり中古屋で探したりして何とかコンプリートを目指していった。『Crispy!』(1993年)は個人的に『ハチミツ』と肩を並べても良いと思う名盤だと思っている。『ロビンソン』ほどの爆発力がある曲はないかもしれないが、夏の涼しさや爽やかさと共に儚さも相まって独特のクセがある割に嫌味がない。

全てのアルバムの感想をつらつらと書いてもキリがないのだが、それだけどのアルバムも私にとってはハズレがなかった。

どこかのインタビューで『フェイクファー』に関してはほぼ全ての作詞作曲を担当しているギターボーカルの草野マサムネ氏自身が気に入っていない旨の発言がちょこちょこ見られるが、冬の包括的でちょっと閉塞した世界観を含んだセンチメンタルな一枚でディスコグラフィーには欠かせないと思う。

※1)マイアミ・ショック
マイアミでミックスダウン(収録した個々の音源をひとつのトラックに落とし込む作業)中にレコード会社からベスト盤を出すと通達された事から。「ベスト盤を出すのは解散するとき」というのが当時の考えだったためメンバー間ではレコード会社への不信感が強まる一方で皮肉にもセールス的には大ヒットであった。

『ハヤブサ』と『夢追い虫』との出会い

こうして時系列順にオリジナルアルバムを聴いていく訳だが、ある時から友人の「最近スピッツって変わったよね」という言葉が引っかかっていた。

確かに90年代のような優等生的なサウンドはあまり聴かなくなったように感じたし、はっきり言えば「90年代にヒットした過去のバンド」という感すらあった。
結局過去の曲を楽しむしかないのだろうかとちょっとした寂しさすら感じていた時、そこで私はようやく自身の思春期の感性に突き刺さるアルバム『ハヤブサ』(2000年)に出会った。これを聴いて友人の言葉がしっくりきた。確かに変わっていた。それまでの丁寧で軽やかなギターポップ調から一転してぐにぐにと内側をえぐるようなラウドロック調に変化したのは明確で、悪く言えば草野氏の独特なハスキーボイスとは合っていない曲もあった。しかしどこか攻撃的なのにスッと流れるような耳馴染みと、かなり変化球に富んでいるのに拒否感の出ない方向転換に私は吸い込まれていった。

そんな勢いに飲まれた中で私がいちばん青春を刺激された曲は『夢追い虫』(2001年)だった。

飯島愛の自伝的小説「プラトニックセックス」が当時かなりのヒットになっていて、映画化が決定した際に主題歌になったのがスピッツの『夢追い虫』だった。『チェリー』や『ロビンソン』など、いわゆる全盛期のアルバム『ハチミツ』の頃のポップでどこか乙女チックで夢想的なイメージとは一転して重厚なギターサウンドと直球で刹那的な歌詞。個人的には90年代ブレイク直後の中性的な世界観を表現した作品も好きだが00年代のよりロック調にシフトしたサウンドの方が好きだと思う時も多い。

『夢追い虫』が収録されているアルバムは『色々衣』(2004年)だが、やっと既発のアルバムに追いついた私に新譜の情報が舞い込みすぐに新品で購入したのは今の若いアーティストがオススメにもよく挙げている『三日月ロック』(2002年)だった。今でもステッカー付の初回版は大事に持っている。
『ハヤブサ』はマイルドでありながら攻撃的な側面も持った不思議な名盤だが、『三日月ロック』は90年代のポップ的な曲調にプラスして転換期を示す冒険的な曲調が見事に融合しているようにも感じられる。

90年代のヒット曲を知っていると『ハヤブサ』の頃からの変貌は一種のセルフ・アンチテーゼのようなものなのだろうかという疑問も出てくるが、インタビューでそれについては否定している部分もある。

パンクバンドから出発していた技術屋バンド『スピッツ』

もともとスピッツはUKサウンドに刺激されたパンクバンドで、インディーズ時代の1曲『惑星S・E・Xのテーマ』ではメンバー全員で高らかに「SEX!!」と発声する。しかし本人や周囲が自覚していたようにインディーズの頃の動画を見るとTHE BLUE HEARTSの影響を受けているのがよくわかる。歌い方は今とは想像がつかない程に甲本ヒロトっぽい。

スピッツがロックに対して強い拘りを持っている事を知ったのは『ハヤブサ』を聴き始めた頃だった。音楽のジャンル分けすらよくわかっていないド素人の私は、スピッツはバンドだがロックバンドではないと思っていた。ポップバンドというのもあまり聞かないが間違いなくJポップを牽引していると感じていた。それでも『ハヤブサ』の頃の楽曲は素直に「ロックバンド」としてカッコいいと思った。

私自身は親が所有していたコンピレーションアルバムで、ママス&パパス『夢のカリフォルニア』やサイモン&ガーファンクル『冬の散歩道』などを繰り返し聴くような幼少期だった。ディズニーランドが好きだった事もあり当時人気アトラクションだった「キャプテンEO」の影響で人並みにマイケル・ジャクソンも聴いていた。
高校生になってからはマルーン5の新譜『Songs About Jane』や『ディスコ・ナイツ』というアルバムなどを自発的に購入していたが、洋楽に対してそこまで知識はなかった。当時好きだったお笑い番組の影響でショッキング・ブルー『Venus』やアル・クーパー『Jolie』などは好んで聴いていたが洋楽ロックに対してはあまり造詣が深くない。あのビートルズですらも『Abbey Road』はかろうじて聴いていたレベルだったので、スピッツメンバーのハードロックやヘビメタに対する知識には良い意味で置いていかれる。

話が逸れたが、『ハヤブサ』から少し離れてしまったライトリスナーも『スターゲイザー』(2004年)や『魔法のコトバ』(2006年)などでまた「スピッツらしさ」を感じたかもしれない。タイアップが少なかったとはいえ正直総合的な評価の中で『ハヤブサ』がごっそり抜け落ちている感があるのはもったいないとは思う。

またいろいろな雑誌や書籍でインタビューなどを読んでいると、作詞作曲のみならずジャケットのデザインも手がける草野氏やリーダーである田村明浩氏を筆頭に、特に若い頃はおとなしく従順そうな青年でありながら自身らの作品に対しては内なる頑固さがあってここぞという時には毅然とした態度が伺えて興味深い。音楽に限らずこれがプロなんだろうなと実感させられる。
プロデューサーやミキサーやデザイナーなどのクリエイター集団とも静かに衝突していた感が面白いし、ベスト盤は出さないと言ってレコード会社と揉めた事件もありながら結成30周年を迎えた節目には当時とは比べ物にならない程の大判振る舞いなベスト盤を発売して再度オリコンを荒らしまくった今を思うとまた楽しい。

バンドはフロントマンが脚光を浴びやすい上に、ボーカリストが作詞作曲まで手掛けているとなるとどうしても他のメンバーは名前とポジションが一致すらしないという現象に陥りがちである。

しかしスピッツのプレイヤーは技術的な評価もパフォーマンス的な評価も非常に高いし、演奏に関して言えばギターボーカルである草野氏も基本的にギターをかき鳴らしたり(『8823』のサビに入る前にギュイーンと音を鳴らすピックスクラッチをするのは草野氏)ハーモニカを吹いたりしているが、スピッツの曲を印象付ける繊細で心地よいアルペジオ※2はギターの三輪テツヤ氏によるものである。
曲に圧倒的な特徴を与えた『ロビンソン』のあのイントロを生み出した事はあまりにも有名だ。むしろアコースティックギターやエレキギターを太い指で力強く弾くのは草野氏の方であるから本当にこのバンドを理解するのは難しい。

サブスク全盛の現代においてイントロだけでリスナーの興味を惹く事のできる曲は視聴意欲を刺激しやすいと考えると、スピッツの音楽は楽曲製作者兼ボーカルでもある草野氏だけで成立するものではないと痛感させられる。

シューゲイザー※3さながら激しいパフォーマンスで魅せる事はせず一貫して「地味」な演奏スタイルだったメンバーの中で一番激しいパフォーマンスを見せるのがベースでありバンドのリーダーでもある田村氏だ。ステージ上では激しく動き回りコードを絡ませて舞台スタッフを振り回したり、本当に弾いているのかと心配になる程に跳ね回りファンの熱気を煽っている。
個人的にはとある会場での30周年のライブツアーの際に感極まって言葉に詰まっていた様子を見た時に、バンドのプレイヤーであると同時にリーダーという支柱として背負ってきた責任感や重圧は素人には想像もできないなと感じた。ベーシストとしての活動も幅広く『ハヤブサ』『夢追い虫』のプロデュースを務めた石田ショーキチ氏(当時は石田小吉名義)とバンドを組んでいたりと精力的である。

※スマホからだと再生できない場合があります

ドラムの﨑山龍男氏は数ある演奏技術の中でも「モーラー奏法」で有名である。
正直ドラムをろくに触った事もない自分にはあまりピンとこないのが本音だが肩や腕の力の入れ方が通常のフォームとは異なるらしく、これを体得しているドラマーはネットで検索する限りではあまりいないらしい。バンド内での様々な役割も交えながら第一線で活躍するプロのドラマーとしての貴重な話が聞けるので下の動画は必見である。また﨑山氏はコーラスも務めているが、バンド全体のリズムを担当するドラマーがコーラスも兼任するのは主旋律に引っ張られてリズム感が狂う事もあり難易度が高いらしい。MVなどでも注目しているとパートに入った時にマイクを移動させているのが見られる。

※2)アルペジオ
1弦ずつ単音でピッキングする奏法の事。複数の弦を同時にジャカジャーンと鳴らす一般的な弾き方はストロークと呼ぶ。

※3)シューゲイザー
イギリス発祥のロックミュージックのひとつ。終始俯いて演奏する様子から「靴を見つめる人(Shoegazer)」という言葉が生まれた。正確には床のペダルや貼り付けた歌詞などを見ている。

令和初の最新オリジナルアルバム『見っけ』に思う事

結成30周年のアニバーサリーツアーを前にしていたという事もあってか前作『醒めない』(2016年)では泥臭くても前進し続けるという宣言にも似た力強い印象から一転、最新のオリジナルアルバム『見っけ』(2019年)はタイアップのものは除いて、この世に抱いていた小さな希望や憧れに対しての諦めや「君」との永遠の別れなどが前面に押し出されているように感じた。音に騙されているがよくよく聴いてみると歌い手の言葉はなかなか悲惨で、それがまたすがすがしい程に気持ち良い。

『見っけ』では初回盤にのみボーナストラックが1曲追加されているが、ここでも何かとの別離を告げているように感じた。

例えば『空も飛べるはず』(1994年)では

きっと今は自由に空も飛べるはず

と歌っているが、『ブランケット』(2017年)では

人間は飛べるもんだとか思ってた

と変化した。

そもそもこの曲は2017年に平井堅に提供されたものなのでセルフカバーではあるが、それにしてもこの振り幅は面白い。

デビュー当時からずっとインタビュアーとして記事に登場している山崎編集長のこの言葉が何故だか妙に刺さっている。

時代に飲み込まれている時点でロックとしてはダメであり、だからせめて時代と踊るポップが今は全盛だ。

爆発的に売れてしまっている時点で大衆に取り込まれてしまっている気もしなくもないが、時代と踊るのがポップならスピッツはポップではないと思った。実際に『ハヤブサ』の頃で友人のように「変わってしまった」と感じたリスナーもいたかもしれないがそれを失敗だったと感じる人はいないと思う。

ライブバンドとしての『スピッツ』から受け取る“言葉”

彼らの音楽は最初から元気をモットーとする応援歌よりは聴き手をとりあえずダウナーに追い込む不思議な曲の方が多い気がしている。

だからなのかライブなどで見ず知らずのファンたちと彼らの音楽を共有するのは少し気恥ずかしいというかどこか違和感があったりもする。誤解を生む表現かもしれないが、スピッツのライブは一体型というより自己陶酔型といった感があってそれぞれの曲において独特な世界観が強いので聴き手の受け取り方にもかなり相違があると思う。キャッチーで繊細なメロディは全ての聴衆の心を掴むが、婉曲的な歌詞も多いので受け手の世界観の中で解釈されざるを得ない。リズムに対するノリはおとなしく、首を優しく振ったり独自の揺れ方を刻んだり、その場で足踏みしてみたりする程度であまり会場の雰囲気に身を委ねすぎていない。遠慮がちにレスポンスする姿はライブ会場という空間だからという義務感から行っているような気すら感じる。

もちろん『8823』(2000年)や『俺のすべて』(1995年)、『けもの道』(2002年)や『スパイダー』(1994年)などのライブ定番曲での会場の一体感がすこぶる楽しいのも本音だ。舞台袖にいるスタッフさんの盛り上げ方は素晴らしい。

敢えて語弊を恐れずに言えば、草野氏が創作するものは童貞っぽくてともすれば中二病っぽい。彼の描く詩は何かに恋心や憧れを抱いている時は人生の頂点を極めたかのようにとてもきらめくし、それを打ち砕かれた時の表現は抽象的なのに(だからこそ)痛烈に心に刺さる。「君」の幻想や妄想や偶像に振り回されながらもそれを追い続ける事をやめられない人間の本能的な儚ささえある。それを既に50代に突入した立派なおっさん(すいません!!)が発信しているにも拘らず全く違和感がないのが人間離れした魅力でもある。

オーディエンスや特定の誰かに対して言葉を投げかけるというよりは、常に「僕」や「俺」の世界の中に常に「君」がいて、普段の生活の中のささやかで小さな幸せを拾い上げては消えてしまわぬように愛でている。でもそれは人がいつか死ぬのと同じようにいつまでも続かないのだと悟って自分で壊して捨ててしまう。これがスピッツの世界観だと勝手に思っている。

EDMや寸分の狂いもない数学のような音楽が人気の昨今に再び若い世代に支持されている稀有な存在だが、バンドが続く限り良い意味で期待を裏切ってくれるサウンドを生み出して老若男女の心をえぐってほしいと生意気にも思っている。
カウンターカルチャーを引っ張るとまではいかなくとも、どこまでも世界を斜めに観察し続ける天邪鬼なバンドでいて欲しい。

過去のライブ映像

生意気ばかりすみませんでした
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