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(ネタバレ)映画『ニワトリ★スター』を観て―裏社会と違和感をファンタジーに変えた異色作

2021年12月18日  2021年6月22日 

ネタバレあります

先日、続編映画『ニワトリ☆フェニックス』(2022年公開予定)※1の制作発表があったばかりの映画『ニワトリ★スター』(2018)をやっと観ました。前々から気になってはいたものの観るには絶対に気合がいる作品だと思ったのでなかなかイケなかったのですが、自分の中で何かがチャージできたぞと感じた瞬間に再生開始して途中離脱することなくがっつり鑑賞できました。公式サイトにも既に「草太の秘密。それは大麻の半端な末端売人である事。」などと書いてある上にメインビジュアルもザ・不良ですので一筋縄では終わらない物語だとはわかってはいましたが、明確な答えは出ないものの鑑賞後はお風呂の中でも布団の中でもリアルに3日間くらいいろいろ考え込んでしまいました。

鑑賞直後の率直な感想

この映画は主演に井浦新さんと成田凌さん、脇を固める役者さんも新人からベテランまで贅沢なキャスティングにスタッフさんが作品に華を添えていますが、興味深いのが製作に伴い「クラウドファンディング」を使用しているところ。監督自らインディーズ映画とカテゴライズしていますが、一般の支援者から出資を募り「製作費」を捻出する(リターン分の差額が出た場合には広告費等に回したそう)という方法を取り、よく見聞きするような大手配給会社等は関与していないようです。エンドロールには支援者の名前が載っていますが、それもリターンのひとつ。

ロケ地に使用した建物「道草アパートメント」
の家主さんでもある監督

目標金額は1,000,000円でしたが
259人の支援者により4,647,100円で終了

つまりクラウドファンディングで支援することにより映画の制作者の一員になれるというネット社会の利点を突いた??システムです。あまり堅苦しい話に傾けたくありませんが普通に映画のビジネスモデルとして興味深いと思いました。ネット上で製作費を募ってアマチュアが自主制作の映画を作るというのは珍しくないことだとは思いますが、これだけの制作陣をまとめあげられたのは度々インタビューなどでも触れられていますが従来の映画制作の過程に縛られない「仲間」や「繋がり」といった縁によって大手の配給会社に引けを取らない話題性も得られる作品に仕上がったと捉えられます。

あらすじ

東京にあるボロアパート「ギザギザアパートメント」に住む雨屋草太(演:井浦新)と星野楽人(演:成田凌)は楽しいながらも自堕落な日々を過ごしている。草太は大麻(マリファナ)の売人、楽人は仕入の連絡担当で自分用にもネタを分けてもらい大麻を嗜む。夜は同じアパートのバーでアルバイトをしながら超個性的な人物たちといつも通りのしょーもなくも愛すべき日常が続くはずだった。

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草太は30歳をとうに過ぎているがお好み焼き屋を営む大阪の実家からは仕送りが送られてくる。歳月を重ねるとともに自身の現状を不安視するようになるが、かといって他にできることもない。26歳の楽人は赤く染めた髪に全身タトゥーの素行不良な若者だが根は臆病で小心者。昼はマリファナを吸い夜は行きずりの女性とヤるだけの生活だが、やはり満たされてはいない。

とある日、ネタがなくなった草太は楽人に仕入の手配を頼む。彼らが大麻を卸してもらっているのはもともと楽人の知り合いだったJAY(ジェイ)(演:ペロンヤス)という自称ラッパーのおかしな男だが、今回2人が連れていかれたのは賭けボクシングをしているヤクザの溜まり場。その後、JAYのマンションに居たところ二代目號和會組長の八田(演:津田寛治)と舎弟の爬部井(演:阿部亮平)が部屋に上がり込んできてしまう。慌てて「ビジネスパートナー」として事情を説明するJAYだが、これによって草太と楽人は八田らに目を付けられてしまう。

ネタの受け渡しの日にJAYに呼ばれたのは彼の自室ではなく怪しげなクラブだった。嫌悪感を見せる草太だが、JAYは「これからはヤクザ」と言って悪友たちと彼氏の目の前で女子高生をマワしたことを自慢気に語り出す。思わず脳裏を過ぎる現場の凄惨さと周囲のマリファナやお酒の悪酔いも手伝ってか嘔吐する草太だったが、その帰り道に連絡がつかなかった楽人が公園で女性に平手打ちしているところを偶然見かけてしまう。

お互いに悩みを抱えていた草太と楽人は歩調が合わなくなってくるが、草太の誕生日には屋上で月や星を見ながら酒を飲みかわしいつもの間柄に戻っていた。

一方、ヤクザになると言って八田の存在を周囲に吹聴していたJAYは八田の逆鱗に触れ危険ドラッグの過剰な投与により殺害されてしまう。草太と楽人のもとを訪れた八田は村田という男のことを尋ねるが2人にはわからない。八田は村田がJAYと名乗っていたことを知ると「連絡がとれない」ととぼけ、シノギが必要になったら爬部井に直接交渉するように言うと草太は携帯番号を強要される。硬直する草太に楽人が割って入り自身の携帯を渡してその場を収めるが、八田に頼み売人として生計を立てる道を選ぼうとする楽人に対して草太は激昂するものの帰る場所がある草太に対して天涯孤独な楽人とはどうしても相容れなくなってしまう。

草太は大阪の実家に帰り家業のお好み焼き屋を手伝っていた。平凡な生活が嫌で実家を出て行ったにも関わらずこの生活が愛おしいものだったと気付いた草太は両親や馴染みの客とともにクリスマスを過ごす。

東京に残った楽人も八田に家を知られてしまったこともあり知花月海(演:紗羅マリー)と彼女の息子であるティダ(演:名倉央)と一緒に暮らしていた。楽人は「家族のため」にまっとうな仕事を探し始めるが、アルバイトもなかなか見つからない。途方に暮れた楽人は爬部井を通じて八田に仕事を紹介してもらえないかと頼んでしまう。歓迎された楽人に待っていたのは「脱法ハーブ」の売人だった。楽人はやんわりと断るが金を渡され押し切られてしまう。

楽人の上司についたのが半グレの川下(演:裵ジョンミョン)。これからさばく「脱法ハーブ」の売人としてテストするという名目でドラッグを吸わされてしまうが、強い副作用により酷い倦怠感に襲われ激しく嘔吐する。そんな楽人を使えると見込んだのか川下は社宅のようなものと称して立派なマンションを一室貸し与えるが、同時に八田たちに隠れて夜の売人も始めるように強いられる。

いよいよ裏社会から足を洗えなくなってきた楽人はひさしぶりに大阪にいる草太に電話をする。草太の誕生日が近いためプレゼントを贈るという楽人に草太は労いの言葉をかけ再会を誓うが、電話を切った後の楽人は戻れない過去を思い号泣する。

日曜日。月海とティダと自宅で休日を楽しんでいた楽人だったが、川下から呼び出しがかかってしまう。マンションの下では既に八田と爬部井も待っていた。爬部井はティダが自分のこどもであることを伝えることで更に楽人を精神的に追い詰めようとしていた。

月海は爬部井に手切れ金として100万を支払い覚せい剤は買わないと伝えていたが、楽人が爬部井に仕事を紹介して欲しいと依頼した頃に偶然にも楽人と月海とティダが3人で仲良く歩いているところを見られてしまっていた。八田と爬部井と川下に騙されずるずると裏社会に引っ張られてしまった楽人だったが、その危険は月海とティダにも及んでいた。何かを察したかのようにひとりエレベーターを降りた楽人が目にしたのは生首と化した八田と「我は全知全能の」(演:鳥肌実)と名乗る無差別殺人鬼だった。

ひとり逃げ切った川下だったが八田の親組織に捕まり始末される。八田が利用していた半グレも追跡されることになるが、「神」が現れたことにより動転した楽人はすぐに大阪か沖縄に逃げるように家族を説得する。

―10ヶ月後
そこには沖縄でのんびり暮らす楽人と月海とティダの姿があった。理想としていた「家族」の生活を手にしたはずの楽人だったが、体調が芳しくない。闘病の末、月海とティダに看取られ優しい母の面影とともに楽人は息を引き取った。

* * *

大阪の草太を訪ねた月海とティダは、楽人が草太に贈れなかった誕生日プレゼントである室内用プラネタリウムと「ニワトリ☆スター」と書かれたノートを渡す。そこには楽人が同居中も草太に打ち明けられなかった自身のことが書かれていた。母の再婚相手から家庭内暴力を受けていたが母が守ってくれなかったこと、地元の沖縄で月海に出会い片思いしていたこと、東京でたまたま月海と再会した時に母親でありながら薬物中毒になっていた月海と母の変化に怯えるティダを支えていたこと、沖縄に移住したものの悪性リンパ腫が発覚したため月海とは籍を入れなかったことなど。楽人が月海とはじめてのキスをして結婚とともにティダの父親となれたのは皮肉にも楽人が沖縄の海に還ってからであった。

楽人が遺したノートにはかつて屋上で夢を語り合った時の「宇宙ロケットのチケットあげる」という約束通り「星旅行チケット」が同封されていた。草太は思わず笑みを浮かべるとともにひとり涙を流すのだった。

蛇足ですが井浦新さんの相棒役に当たる役名が「星野」なのは映画『ピンポン』世代には刺さります。

TERRY THE AKI-06 に捧ぐ

エンドロールで流れる「TERRY THE AKI-06に捧ぐ」というのは全く予備知識なしに観た私からするとどういうことだろう…とはなりましたが、主演の井浦新さんと「たなか雄一郎」名義で原作小説も執筆している監督のかなた狼さんを引き合わせてくれた共通の友人であるレゲエDeeJayの方のお名前だそうです。「捧ぐ」という言葉が示す通り残念ですが2007年8月に34歳の若さで逝去されています。

「あいつのための映画じゃない」という言葉は、半分は本当で、半分は嘘かも知れないと思った。

このように語る監督のインタビュー等を拝見すると、この映画にとって過剰なほどに表現される暴力や過激な性描写に伴う犯罪に対する肯定や賛美が作品の根幹ではないことはあくまで自分なりに理解できたと感じております。とりわけ井浦新さんとかなた狼さんにとっては制作の10年程前には2人で何かを作ろうと約束していたものが形になりひとつの「決着」や「ケジメ」となったものがこの映画。「TERRY THE AKI-06」さんへの弔いも込められた特別な作品のようです。

井浦新さんのInstagramより

正直なところ私は存じ上げませんでした(申し訳ありません)ので、よく知りもせずに憶測で感想を述べるのはいささかはばかられますが、ネット上に遺っている活動や各方面からの評価などを見るとTERRY THE AKI-06さんの世界観のようなものに触れた方がより作品の真髄に近付ける気がしました。

作品のアクセルを踏んだのはLiLiCoさん

映画の冒頭で圧倒的なバフをかけたのは普段は映画コメンテーター側のLiLiCoさん。写真家LESLIE KEE(レスリー・キー)氏の写真集『SUPER LOVE』(2013)でも肉体美を披露していましたが、開始数分にして洋モノAVもびっくり(絶賛してます)の快楽的なセックスシーンを熱演。それがクランクインの初日だったというので、そのテンションをベースに作品が牽引されていったのではないかと推察するレベルで凄い…というかめちゃくちゃカッコよかったです。いやらしい意味ではなく一見の価値あり。相手役の「スクリーン童貞」を奪われた成田凌さんも一糸まとわず前貼りのみでLiLiCoさんのお尻をスパンキングしているのにはもはや笑いました。管理人さんの役はLiLiCoさんでなくては成立しなかったと思います。

不気味だが印象的なアニメーション技法

唐突に現れるアニメーションはイギリスのコメディグループであるモンティ・パイソン(Monty Python)のスケッチ(コント)や映画の合間に挿入されるテリー・ギリアム氏によるアニメーションや、最近だとアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』で対魔女の描写になると劇団イヌカレーが手掛ける絵に変わり作品の世界観が恐怖に(でも可愛く)なる手法などを想起させました。途中はホラーゲームのような、例えば『SIREN』の映像に近い恐怖感もありました。

最初は実験的なことも兼ねているのかなーと思って観ていましたが、ラストで草太が唐突に月に行くシーンを観て「この映画にはアニメーションが必要だった」と感じました。それまでは観客を混乱させるような演出でもあったので、単なるファッション的なものなのか作品の中での現実と非現実を区別するために必要なものなのかと考えたりもしたのですが、「月に行く」という突拍子もない行動をアニメーションで締めたおかげで現実なのか非現実なのかですら良い具合に曖昧になったような気がしたんですね。これが完全実写だったらおそらく違和感は残ったと思います。

裏社会をファンタジーで捻じ伏せる危うさ

深作欣二監督作品(『バトル・ロワイアル』『クロックタワー3』等)、北野武監督作品(『ソナチネ』『HANABI』等)、『龍が如く』、『闇金ウシジマくん』、『新宿スワン』などの裏社会や暴力などを描いた作品を割と好んで観てしまうので、私の中で「架空上の裏社会の常識」というものが勝手にできあがってしまっていたがゆえに本作の裏社会の描き方に違和感を覚えたというのは率直な感想としてありました。

冒頭から不安だったのは大麻(マリファナ)の売人である草太もそうなのですが、売りはやらないもののネタ(商品)である大麻を普通に吸っている楽人の描写。管理人から勝手に部屋に転がり込んでいることを詰め寄られればセックスで片付ける、警官から職務質問を受ければお尻を見せるなどスタートから自由奔放。もちろん日本では大麻の所持と売買(使用に関しては曖昧)は違法ですので褒められた生活ではありません。そのため、年齢を重ねるとともに大麻の売人という生活に不安が募っていた草太とは対照的に名前の通り楽観的な楽人は非常に危なっかしい。しかしその刹那的な生活態度が「カッコよく」見えてはいけないと思って観ていました。

あくまで私が観てきた創作上での話ですが、ドラッグに手を出したキャラクターは2度と物語の本筋には戻ってきません。良くて逮捕されるか、死ぬか、です。これは日本でもアメリカの作品でも割と同じで、特にアメリカの場合に致命的になるのはヘロインです。物語の中盤で楽人が「マリファナとか悪いもんだとか思わない」「海外とかだったら医療とかにも使われている」と強がるシーンがありますが、結果的にヤクザに任されたのは違法ドラッグの売人でした。不純物が多いためかテストと称して吸わされた楽人は激しい副作用により延々とかなりリアルに吐き続ける描写が出た時に、何故か私は安心してしまったのです。映画やドラマやアニメを観ていれば嘔吐のシーンはよくあります。ただこの場合はお酒の飲み過ぎなどとは訳が違うので苦しみ方も半端では済まされない。それを「このまま演じさせたら本当に吐くんじゃないか??」と思わせるくらいにやりきったのは本当に素晴らしかったと思いました。ここで手を抜いたら「ドラッグなんてその程度か」と受け手に感じさせてしまうと危惧したからです。

草太は「基本的に客は知り合いか、信用できるヤツから紹介された人だけ」と言っていましたが、それを買った人間がどう使用するかは草太の知るところではありません。売ったということは何らかの被害がどこかで起こるということ、そしてそれを安易に使用するということは自身の体を傷付けるということを知らしめる決定的な何か(≒草太と楽人に対する罰のようなもの)が正直欲しいと感じながら観ていました。草太は既に大阪で平穏な暮らしに戻っていましたが、楽人にとっては因果応報といった物語の流れに「これは(楽人の)死亡フラグだな」と思って鑑賞を続けていました。酷かもしれませんが私一個人としては草太、特に楽人に対しては主人公にも関わらず厳しい見方をしていたと思います。

最初は「まともな仕事もできない」「俺みたいのはそうやって生きてくしかない」と草太に話していた楽人ですが、月海とティダのためにも自分なりに普通の仕事を探すもののその奇抜な容姿と学のない履歴書だけでふるいにかけられてしまい結果的にヤクザである八田に仕事を依頼してしまいます。弱々しく「こういうの(危険ドラッグの売人)は」と断っていますが、相手が相手なので断り切れなくなるのも容易に想像できます。この辺りから楽人の不器用さに漬け込むヤクザや半グレに対して怒りの矛先が変わります。

もうひとつ気になったのは暴力団の描写。途中で自ら「三次団体」と言っている(設定も「広域暴力団3次団体」)ので、楽人が関わってしまった組には更に直系の親団体がいて毎月決まった上納金を納めなければなりません(八田の「うちみてえな三次の細い枝から金取りやがってよ」という台詞がそれ)がそこは半グレと適当なドラッグをさばいてうまく儲けているようでした。自身が使っている半グレが他の組の半グレと揉めた時も、一緒に金を巻き上げてヤクザ同士で折半する程の狡猾さ。その割に組長である八田のやることもこれまた奔放で、自分のことを吹聴する半グレが邪魔になってきたので愉快的に殺害し死体の処理はこれまた一般人すなわちカタギにお任せ。楽人のこともドラッグの売人として使えそうだと最初から足切り要員として使っているのは観客側からすれば見え見えですが、そもそも半グレとはいえ組織には入っていないカタギの若者。必要なくなったからといって殺人ばかり繰り返していたらさすがに警察も動くと思いますし、何より妙な動きが目立つようになればいつ親団体に何らかの制裁を受けるかわかったものではありません。

この手の組員は創作上の定石としては何らかの下手を打って親にケジメをつけさせられるという退場の仕方が多いのですが、ある意味あっさりとした最後でした。ずる賢いだけで頭のきれるやくざではないことはわかりますが、最終的に「神の男」とされる因果関係不明のサイコキラーに殺害されるというのは初見では呆気にとられたのもあって少々腑に落ちませんでした。しかし最後まで鑑賞していればそこは物語の核ではないと思ったので割愛。

女性と子供に対する描写は適切だったか

月海には八田の舎弟頭にあたる爬部井との間に息子のティダがいます。冒頭では薬物依存症になっており息子のティダにも感情をコントロールできず怒鳴ってしまい自己嫌悪に陥っています。そんな月海とティダを草太に隠れて支えていたのが楽人でしたが、あくまで女性の立場から見て違和感を覚えたのは「立ち直りが早すぎる」ということ。ティダは幼い時に目の前で母親が父親(爬部井)に暴行とセックスの強要を受けているのを目の当たりにしています。月海も重度の薬物依存に見えたので、大麻の経験しかない楽人の介抱だけであそこまで元気になるのは愛の力だけでは片付けられない気も。ティダも酷いトラウマを植え付けられたはずなのに沖縄に移住してからはサッカー少年となり将来的には世界的なプロのサッカー選手(演:高良健吾)になります。個人的に草太と楽人の話を掘り下げなければならないがゆえに月海とティダの扱いがちょっと雑ではないかなとは思いました。そのため、例えば楽人が亡くなった後など描写されていない部分できちんとケアを受けたものと脳内補完しています。

また、爬部井が八田に「本当に自分のガキ殺れんの?」と言われた時に「マ×コにピュって出したら出てきちゃっただけ」という台詞は目も耳も覆いたくなるほど。センシティブな表現に敏感な女性(セクシャル問わず)は注意しましょう。

草太の男泣きで迎えたカタルシス

さまざまな暴力や性的暴行に犯罪などの不条理が繰り広げられた場合に受け手が潜在的に求めてしまうのは何らかの社会的制裁や最悪の場合は「死」なのかもしれません。それが物語の展開として絶対的に必要かどうかはわかりませんが、1時間以上それらに耐えてきた受け手の心情としては自身の擬似的な鬱積を晴らすためにそういった展開は少なからず求めると思います。単純に私がそうでした。

この作品で良くも悪くも裏切られたのは最終的に楽人が「病死」するという不可抗力によってキャラクターが強い喪失感と罪悪感を背負わなければならなくなったという展開でした。特に草太はヤクザに目を付けられてしまった楽人を東京に置いたまま大阪の実家に帰り、楽人がひさしぶりに電話をかけた際にも彼が窮地に立たされていることを察してあげられませんでした。そうしたすれ違いの中で月海から預かった楽人の手記を読んだ草太は嗚咽を漏らして泣きます。ここでようやくぽっかりと浮いたままだった「罪」のようなものが消えたような気がしたのです。客観的に見れば楽人の人生はどうしようもなく儚いものでしたが、「一瞬で光って、その輝きが今も残ってる」という草太に理想を語った生前の言葉通りに散っていったとも考えられますし、ただただ愛に飢え愛を求めた純朴な青年だったということも感じられた終幕でした。

個人的に刺さった描写

楽人が月海とティダと一緒に暮らしていくためにもまっとうな仕事に就こうとアルバイトを探すもことごとく断られるシーンがあります。サイドを刈り上げて真っ赤に染めた頭の男を採用する職場もないとみて、タトゥーは簡単には消せないので髪の色だけでも黒に戻そうとヘアスプレーを使います。ここで普通だと「美容室で黒染めしてもらえばいいのに」とも思いますが、そこに楽人の不器用ぽさと貧困さも見えてきます。

自分なりに慣れないことをしてみたものの続かずに結果的には八田のもとを訪れてしまうわけですが、新宿の花園神社の前で草太に電話した後に蕎麦屋の「月見そば」の貼り紙を偶然目にした楽人は草太の前ではガードマンの仕事をしているなどと虚勢を張っていたもののここで我慢していた感情が抑えきれなくなり崩れるように泣くわけです。さすがに楽人ほど波乱万丈ではないですが、似たような経験は誰しもあるように思い妙に印象的な場面として残りました。草太は警告したにも関わらず自分はここまできてしまったという自覚のようなものがこういった形で見えたのは今風に言うとエモかったです。

ちなみに美容関係者に聞いてみたところ、赤く染めた髪は既にブリーチ(脱色剤)がかかっているので黒染めの際に再度ブリーチをかけると髪へのダメージは相当なものになるそうなので脱染剤(人工色素のみ抜くもの)で赤みを抜いた後に黒に戻す方が良いらしいです。できればトリートメントもした方が良いのでお金は万単位でかかります。学生さんや髪色自由のフリーターさんなどで派手なカラーリングをしている方は就活等を考えているなら早めに黒に戻しておきましょう。カラースプレーも不自然に真っ黒になったりムラが出るので見破るひとには見破られます。

ファッションが好きそうな楽人自身もそうですが、楽人役の成田凌さんは美容師免許を取得されているそうなので自身のヘアセットはお手の物だろうと思いながら観ていました。

グロやゴア表現、過激な性的描写やリアルな嘔吐シーンが苦手な方にはどうしても生理的嫌悪感を与えざるを得ないカットが多い作品ですが「なぜそのシーンが必要だったか」というところを深く考えさせられる映画でもありました。暴力や違法に手を染めることがカッコいいと思うのか、女性やこどもを乱暴に扱うことに快楽を感じるのか、ある意味で鑑賞する側は何かを試されているのではないだろうかとすら感じる相互的な作品に出会えたと私(何の専門家でもないただの普通のひと)は思っています。こういった映画好きの方には是非観ていただきたいですが、要所要所で吐き気をもよおすレベルで気分が悪くなる表現は正直あるので映画としての良さは削がれてしまうかもしれませんが心配な方は最初は小窓(ピクチャ・イン・ピクチャなど)にして観た方が良いかもしれません。

コロナ禍に制作されたパラレル続編的なリモート作品

* * *

1)映画『ニワトリ☆フェニックス』の伊勢志摩版ポスタービジュアルがお披露目されました!!また、冒頭で続編と記載していましたが正確には続編ではなくパラレルです。失礼いたしました。

参考:
東京都福祉保健局 みんなで知ろう危険ドラッグ(違法・脱法ドラッグ)(https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/no_drugs/index.html)2021.6.22

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