【ネタバレあり〼】スピッツの名曲「楓」が原案の映画『楓』を劇場で観た感想や得た知識まとめ
※ネタバレあります&個人の感想です
2026年の映画初めとして『楓』を観てまいりました。スピッツの超名曲「楓」(1998)を原案とした120分の映画となっております。監督は『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004)『窮鼠はチーズの夢を見る』(2020)など作品の枚挙に暇がない行定勲監督、脚本は『ソラニン』(三木孝浩監督/2010)など多数の作品を手掛けている髙橋泉氏で、ザ・ヒューマンドラマ&ザ・ラブストーリーというのは制作陣や公式サイトや予告編などから全体的な世界観は伺えることができます。
こちらに関しては偏見極まりないかもわかりませんが配給がアスミック・エースやファントム・フィルム(現在はハピネットに吸収合併)の時はヒューマン系の邦画が多い気がしています。むしろその逆も然り。
たまたま付近で用事があったのでTOHO六本木で観てまいりましたが、やはりこの時期の六本木ヒルズ周辺はとにかく寒い。ビル風やけやき坂通りの吹きおろしで初春の寒風が鋭い刃物や小さな針のように刺さります。そのため東京タワーを始めとした夜景やイルミネーションなど楽しむ余裕もなく冷えと戦いながらの入場となりました。
何となくホットミルクチー片手に映画初めはスピッツ曲原案の『楓』から🍁#楓 #映画楓 #福原遥 #福士蒼汰 pic.twitter.com/aZEJKsFm0e
— ほちょこ (@e_hocho) January 15, 2026
ちなみに「楓」は作品内で3回流れます。3度目はオリジナルがエンドロールで使用されていました。鑑賞中&鑑賞後のいちばんの率直な感想は「スピッツが好きだから観たい」というひとはスピッツの作品ではなく「行定監督映画として観る」べきかもしれないなというものでした。
劇中歌/渋谷龍太(SUPER BEAVER)
劇中歌/十明
スピッツ楽曲をモチーフにした映画には『海でのはなし。』(大宮エリー監督/2006)もありますが、こちらは劇中全体で複数の楽曲が使用されており、この作品も「=スピッツ(完全一致)」と思って観ると正直なところ違和感が残ります。あくまで監督や脚本家などの作り手の解釈によるスピッツだという前提を持っていないと「自分の解釈や認識とは違う」という無意識の拒否感が出てしまうかもしれません。これはスピッツに限らずアーティストの曲を原案にした作品全てに当てはまることかと思っております。
忖度する理由もないので本当に正直な劇場での鑑賞の動機を書くと、主演がまいんちゃんこと福原遥さんと福士蒼汰さんでなかったら映画館まで足を運んで鑑賞には至らなかった可能性が非常に高かったです。
例えば、いかにも今売り出し中です満載の若手俳優さんで演技力に欠けるであるとか、逆にいかにもスピッツっぽさを狙っている感じが透けて見えるキャスティングだと一気に萎えてしまうという面倒な客なので、今回のキャスティングを知った時にはもはや胸をなでおろしました。いわゆるケータイ小説が流行った頃の系譜の映画はかなり減ってきたとは思いますが、油断すると春先や夏にスッと差し込んでくるので要注意です。ケータイ小説を否定しているとかではなく私の趣向に合わないだけです。
以下、やや本音+お下品注意
まず大前提として私がもうちょっと若かったらもっと感情移入というか憧れのようなものを持ちながら鑑賞することができたかなと思います。まず現実および非現実的な面に対する指摘にばかり目がいってしまう悲しさ。
主な登場人物
双子の兄・須永涼(福士蒼汰)
双子の弟・須永恵(福士蒼汰)※1ヶ月前に死去
恵の恋人・木下亜子(福原遥)
幼馴染の梶野(宮沢氷魚)
映画『チェンソーマン』(吉原達矢監督/2025)では主人公たちが夜の学校に潜入してプールまで入る描写がありますが違和感はありません。しかし実写の影響か、母校であったとしても勝手に教室や屋上に出入りすることはできないはずと思ってしまうのです。また、隠して目の手術で入院していたことが発覚した際にマスクもせずに外来に駆け込み病室に行くのも違和感がありました。今の総合病院や地域の診療所でも科にもよりますが厳しくルール付けされているので(特にコロナ禍を境に)、病院の規模によっては警備員さんにマスクや消毒や検温を促されたることもあります。特に術後すぐの患者さんが入院しているような病室にマスク着用もなしに駆け込んでいくのは違和感を拭えず集中できませんでした。
予告編でどこかで亡くなるシーンがあるのはわかっていましたが、広い道路なのに暴走トラックがピンポイントで突っ込んでくるというのはさすがに「!?」となりました。
その後、気が動転していた亜子が双子の兄の涼を恋人の恵と思って「恵ちゃん!」と呼び抱き付いてしまったところから涼は実は生きていた恵として約1か月間の同棲生活を開始することになります。そこまでしたのはそもそも恵より前に涼の方が先に亜子に一目惚れしていたからです。
さて、同棲していたらチッスや営みが発生するはず。ましてや死んでいたと思ったら生きていたとなれば洋画だったら即合体。高校生からの付き合いで社会人になっても寝食を共にした同棲までしているのにプラトニックなのはいかにも邦画の純愛系。年齢的に結婚していてもよさそうのに同棲というのもまたラブロマンスらしい(という感想が出てしまう自分も嫌)。そして2人で海で彗星を探している際に涼と亜子がキスをするシーンがあるのですが、亜子はすぐに恵が涼だとわかっていたので涼と恵の初キスであるのはお互い理解している(かなり無理はあるが涼はバレていないと思っている可能性もある)とすると、同棲が再開してからまさか1回も…という邪推が生まれてしまい本当に情けなくなりました。
夜明けの海(ロケ地の表記的におそらく千葉)なんぞいちばん寒いのに毎日仕事前に夜明けまで彗星の撮影、そのまま帰宅して朝ごはんと一緒にデータ確認、そして彗星とは関係ない会社に出社、もはや自暴自棄としか思えない行動になぜか観ている側が老婆心発動により心配になりました。
物語の開始早々に不慮の事故で亡くなってしまう恵ちゃんですが、印象としては涼と亜子との出会いのきっかけを不可抗力的とはいえ横取りする、亜子を残して逝ってしまうことで女性を泣かすとなかなかに酷い男です。涼も双子の弟を亡くしているにもかかわらず背負わされた(勝手に背負ってしまった)ものが多すぎてなかなか不憫な立ち位置です。
実は鑑賞後も関係性がわかっていなかったのですがシゴデキ風の梶野が謎でした。プログラミングのような仕事をしていましたが、実際にコードを打っていたらあんなに短調かつ常にキーボードをカタカタはしないだろうなと思って観てしまいました。
立川や千葉がロケ地になっていましたが、関東近郊で星があんなに綺麗に見えるところはさすがにないかなというのも直観的な感想。都内では冬の大三角(ベテルギウス、シリウス、プロキオン)やオリオン座は比較的よく見えますが、劇中にあったような天の川のような星空は観測できません。矢口の標識が見えたのと電車が走っていたので大田区の方かもしれません。違ったら本当にすみません。
個人的にいちばんスッと落ちてきた著名人の感想がこちら。
🍁映画『#楓』🍁#相田冬二 さんの作品に対するコメント!#楓泣き #映画楓https://t.co/qJlwce44oGpic.twitter.com/sjpokPoNrO
— 相田 冬二(Bleu et Rose) (@aidatoji) December 17, 2025
SNSでもハッシュタグ「#楓泣き」として拡散キャンペーンを行われていました(2026.1.31迄)が、正直泣くという感覚とはまた違う印象で観ていました。涙腺にきそうになったのは恵が使用かつ今後の事務所にしようと計画していた望遠鏡の部屋を涼が発見した時に、それまで弟を亡くしたという感情はよそにずっと亜子のことだけを考えて行動していた涼が嗚咽を上げて泣いたところです。常に冷静で少し影を落とした存在で、弟の恵に亜子を結果的に取られてしまったとしても弟に対して劣等感のようなものはあっても露骨に不満や嫌悪感を示す描写はなかったように感じています。一貫して自己評価が低く非常に自己犠牲的な人間像に感じました。
約束の地"ニュージーランド/テカポ湖"
ここまで書いておいて今更何を言っとるんだという感想でもあるかもしれませんが、平凡な日常でしかなさそうな風景がおしゃれになる切り取り方はさすがです。フィクションの設定に目を瞑れないようではもはや自分が鑑賞に向いていないわけでもあるのですがロケハンが神です。
特に今作の中核を担う舞台になるのがニュージーランド(New Zealand)のテカポ湖(Lake Tekapo)です。天体に関しては知識不足ゆえ「北極や南極のようなオーロラが見えそうな地域がいちばん星が見えそう」「北欧はすごそう」くらいの認識しかなかったので、日本とさほど離れていないニュージーランドに星の名所が存在するのはこの映画を鑑賞するまで本当に知りませんでした。
テカポ湖周辺は国際ダークスカイ協会(DarkSky International)によって「星空保護区」に認定されているとのこと。そもそも星空を保護するという考え方や「光害」といった概念のようなものを意識する機会がなかったので非常に勉強になりました。
楓をメープルとするとカナダが真っ先に思い浮かびますが、ニュージーランドの国章になっているのは「シルバー・ファーン」というシダ植物だそうです。ちなみに国旗には南十字星が表現されています。劇中で亜子が落葉樹から落ちた葉っぱを持ってきて「楓」と言いますが、恵に「これは楓とは違う」と笑われ「こっち(ニュージーランド)の楓」と言い返すシーンがありますが、基本的には切れ込みの入ったあの形状の葉っぱを落とす植物はだいたいカエデ属でしょう(ちょっと適当)。仮に亜子が持っていたのがモミジバフウ(アメリカフウ)だった場合にはフウ属なので厳密にはカエデではありません。


一般にカエデと呼ばれている樹木は、カエデ科カエデ属の、主として北半球の温帯に分布している150種を総称したものです。特に、東アジアを中心に日本に約20種、中国に約30種が分布し、北アメリカ、ヨ-ロッパにまで広がっています。主に落葉高木で切れ込みのある葉をつけていますが、まれに常緑性のものや切れ込みのないものもあります。葉を対生につけるのが特徴です。園芸品種が多く、特にイロハモミジ(イロハカエデともいう。Acer palmatum)、ハウチワカエデ(Acer japonicum)など、日本産の種に属する品種が200~400品種といわれています。園芸の世界では、切れ込みが深く数が多いものをモミジ、浅く少ないものをカエデと呼んでいます。
https://www.shuminoengei.jp/m-pc/a-page_p_detail/target_plant_code-210
カエデというのは総称であり日本では一般的にモミジがそれに相当すると考えられます。秋が深まる頃に(最近は四季も何もありませんが)綺麗な赤色を見せ冬の訪れとともに落葉する姿は春の桜と対を成すかのように儚さを感じるものです。
国鳥でもあるキーウィやカカポ(フクロウオウム)などのショート動画でもミーム化されてバズり散らしている謎の鳥たちはニュージーランド固有の生き物だそうです。哺乳類がいないという特殊な生態系により飛べない鳥だが生き延びていたというハッピーな鳥ですが、人間が哺乳類を持ち込んだことで現在は絶滅危惧として保全運動が行われているそうです。
ひとそれぞれの『楓』
私にとっての「さよなら」は特定の人物に対してではなくふわっとした概念みたいなものですが、作中では「恋人の恵ちゃん」「弟の恵」もしくは彼の死によって自身たちが喪失していた心や日常生活など(酷ではありますが故人と本当の意味で別離する≒さよなら)といった点に焦点が当てられていたように感じました。
全体的に否定的というかネガティブな感想に偏りがちになってしまったのは、私自身が「楓」という曲に自分なりの思い出や思い入れがあるからだと思います。初めて耳にしたのはカウントダウンTVだった記憶があります。ウィキによると「TBS系『COUNT DOWN TV』の当時のオープニングテーマに使用され、本来のPVとは別で、番組用のビデオクリップも制作された。」とのこと。しかしながら番組用のMVは覚えていません。それでも深夜に「さよなら君の声を」と悲しいフレーズが流れるあの独特な感覚はこれだけ時間が経っても何故か忘れられません。
その後は学生の頃に友達から借りたベスト盤をカセットに録音し、父の遺品になったウォークマンでさすりきれるレベルで聞いていました。ちょうど父が亡くなった時期と重なっていたので「死」というものをより現実的に、かつ俯瞰的に見ていたと思います。のちに「楓」が収録されている『フェイクファー』(1998)を別の友人が貸してくれたため同アルバム内の「ただ春を待つ」も特に学生の頃は真冬の中よく聴きながら帰路についていました。史上最強の生物とも言える女子高生でも冬にスカートは普通にきつかったです(ので校内ではたまにシャカパンはいてました)。
ひとによっては失恋や死別などの別れの歌、自身と世界の離別を表現した歌などなど、解釈や感じ方は本当にさまざまで十把一絡げにはできないものだというのはずっと感じています。今になっても「これ」という解釈はありません。その時々の感情や日常などが影響して歌の評価や受け取り方も変化するものだと思うので、私はひとそれぞれの価値観や解釈が全ての答えだと考えています。
そしてこの映画も「楓」という楽曲がもたらしたひとつの解釈であり、それを否定するつもりも毛頭ありません。が、スピッツの楓=映画楓ではないというのがイチ観客としての感想です。
バターが溶けて流れ込んでくる
参考引用:
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』ニュージーランド(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89)2026.2.13
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』楓/スピカ(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A5%93/%E3%82%B9%E3%83%94%E3%82%AB)2026.2.13
地図に使える素材 FreeSozai.jp(https://freesozai.jp/)2026.2.13
みんなの趣味の園芸 育て方がわかる植物図鑑 カエデ(モミジ)(https://www.shuminoengei.jp/m-pc/a-page_p_detail/target_plant_code-210)2026.2.13
株式会社ケンコー・トキナー 特集ページトップ > 天文 >『冬の大三角』を使って冬の星座を見つけよう!(https://www.kenko-tokina.co.jp/special/celestial/201601_sorawomiyou.html)2026.2.13
もみじかえで研究所 カエデ属調査研究報告 > もみじとかえでの違い(https://www.momijikaedelab.jp/%E3%82%AB%E3%82%A8%E3%83%87%E5%B1%9E%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E7%A0%94%E7%A9%B6%E5%A0%B1%E5%91%8A/%E3%82%82%E3%81%BF%E3%81%98%E3%81%A8%E3%81%8B%E3%81%88%E3%81%A7%E3%81%AE%E9%81%95%E3%81%84/)2026.2.13
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