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映画『インストール』―学生時代の深夜に観ていた青春的モラトリアム作品

2021年8月26日 

先日、私の青春時代(主に高校時代)を代表している映画のひとつと言っても過言ではない映画がネット配信されていたので懐かしさも手伝って観てしまいました。その名も映画『インストール』(2004)。

原作:綿矢りさ「インストール」(河出書房新社刊)
監督:片岡K
キャスト:上戸彩、中村七之助、神木隆之介、菊川怜、小島聖、田中好子

あらすじ

「してみる?する?したい!」
平均そこそこの毎日に突然脱力!学校へ行くのをやめた朝子は制服着て家を出て母の出勤を確認して戻る。もう17歳、まだ17歳。このまま小さくまとまった人生を送るのか…。朝子が捨てたPCを拾った小学生男子は変わり者だ。可愛い顔してPCをインストールし直し押入でこっそりネットに接続、「いいバイトを見つけた」。それは人妻ミヤビの身代わりエロチャット!そこで2人が見たものは…

―『GYAO!』作品紹介より

* * *

他に思い出深いのは『プラトニック・セックス』(2001)や『ピンポン』(2002)です。前者は当時から敬愛していたスピッツが主題歌を担当するということでウキウキで友達と小さな映画館に観に行きました。思いっきり学校帰りの制服姿で行った記憶がありますがR-15指定だったので特に何か注意されることもなくパンフレットも買って帰りました。後者はTSUTAYAでDVDをレンタルして私の自宅で友達と観ました。私が通学していた高校に卓球部があったかどうかは覚えていませんが、高校で部活動という超青春は一応現役で見ていた(幽霊部員だったのでほぼ補佐)ので現実でも虚構でも味わえたモラトリアムは今でも忘れられません。

映画『インストール』は綿矢りさのデビュー作である小説を原作とした上戸彩主演のちょっぴりエッチで若さが爆発しまくっている非常にポップな作品です。そのためPG-12指定。覚えている方がどれくらいいるかわかりませんが書店に小説がPOP付きで平積みされていたのを見た文芸好きの友人が「買わねば」と言っていたくらいには当時は話題になっていたと思います。

私は映画館ではなく深夜放送で初めて観ました。学生の頃からもっぱら読むのは漫画ばかりだったので小説は手にしていないのですが、テレ東のド深夜に定期的に放送していてその度に観ながらだらだら勉強していました。今は昼夜逆転や不眠症気味で眠れないという悲しい理由で夜更けまで起きていたりしますが、当時は夜更かしそのものに少し背徳感があって楽しかったのもよく覚えています。今だったら昼間は通学して更に深夜3時過ぎまで映画を観続けるという生活はちときつい。思春期の体力は際限がないですね。

主演の上戸彩さんは同世代ということもあり作品に対しても親近感が湧いたのと、とにかく可愛い!!なんとなく退屈な学生生活を送りながら将来に対してこれといって明確な目標も見えてこない等身大の高校生が特殊な不登校を始めるところから物語はスタートします。

主な舞台は17歳の野田朝子(演:上戸彩)と10歳の青木かずよし(演:神木隆之介)が住む超巨大なおしゃれマンション。セットやCGなどではなくロケ地で有名らしい「マークスプリングス」という神奈川県横浜市に実在する戸建複合型の集合住宅街です。最寄りは東急田園都市線の南町田グランベリーパーク駅。確かアウトレットモールがあったと思うので目当てに行ったことがあります。再開発によりヨーロッパの雰囲気を感じさせる洗練された空間になっています。

主人公の朝子はコウイチ(演:中村七之助)の事故死をきっかけ??に登校拒否を始め「個性のない普遍的な風景のひとつ」「小さくまとまった人生」であることから脱する術を模索しようとします。「あんたには人生の目標がない」とコウイチに指摘された朝子がとりあえず実行したことが自分の部屋にある自身の所有物を全て捨てるという行為。共同のゴミ捨て場に同じマンションに住むかずよしが現れ、朝子が祖父からもらったパソコンを譲り受けます。それをきっかけに朝子とかずよしはネットで出会った風俗嬢である「ミヤビ」の代わりに昼間のエロチャットのバイトをすることになります。処女で知識がない朝子と、まだ小学生でありながら知識だけは豊富なかずよしはチャHを通して「エロの世界」の奥深さを知ります。しかしいつまでもそんな生活が続くはずもなく…というお話。

チャットに使用していたパソコンは当時のMacintoshでOSは9.1かつ(おそらく)ダイヤルアップ接続という懐かしさ。起動音の「ボーン!!」もかなり懐かしかったです。

上戸彩と神木隆之介の若さと可愛さを楽しむ

公開当時の上戸彩さんはまだ高校を卒業したばかりかの年齢、そして現在は日本演劇界のトップを独走し続ける神木隆之介くんはまだ小学生。神木くん(小さい頃から観ているためこの呼び方に慣れてしまいました)が超人気子役だったのは有名ですが、既にアラサーになった神木くんを知っている状態で声変わりもしていない頃の演技を観るとまた新鮮。2人ともとにかくフレッシュで可愛い。上戸彩ちゃんも当時の流行りだったウルフカットと派手すぎない茶髪にラフに気崩した白シャツとスカートだけの学生服が似合っていて、とにかく最高。

朝子の母&かずよしの担任役は故・田中好子さん。キャンディーズのなかではスーちゃん「推し」の私はひさしぶりに映画で姿を観た時は思わず声を上げてしまいました。最後まで朝子とは衝突がありましたが、そんな母の姿を見てか何か吹っ切れたようなシーンもありました。

漠然とした「満たされない感じ」を楽しむ

主人公である朝子はまだまだ現役の高校生。劇中でも説明していますが自分が「若さ」という何ものにも代えがたい特権を持っていることを自覚しています。「どれだけ眠らなくてもへっちゃらな強い体」「新鮮な脳みそ」という独白は誠にその通りで、今の年齢(30代)になると10代の頃の力はいったいどこから湧いて出たのだろうと不思議で仕方がない。同時に私の場合は「若いって自由がなくて嫌だな」「おとなと比べて経験に乏しいって嫌だな」とフラストレーションを溜めていたこともありました。

ちょっとドキリとしてしまうのは、性の知識は豊富なかずよしに対して処女の朝子が「触ってみる?」とおっぱいを触らせるシーン。服とブラジャーの上からなので「あんまり(体温)ないですね」と言うかずよしに対して朝子はかずよしのほっぺたを触って「やわらかいね」とお互いの体温を感じようとしますが、性的な感じというよりは本能的なスキンシップに近いです。どこか満たされないのは自分ではない他人と直接的に触れ合うことが少ないのも要因なのかもしれないと考えて観ていたような気がします。いちばんド直球なのは裸と裸の触れ合いですが、そういった関係に限らず友達でも動物でも「温度」を感じられればスキンシップは有効らしいですね。

最後に朝子が吐き出す言葉が印象的です。今の時代には特に通ずるものがあるかもしれません。

生きていたい(生きていたかった)
誰かに会いたい
話がしたい
声が聞きたい
関わり合いたい
直に触れあって
繋がって
大切にしたい
温かくて不完全で
どうしようもないものを好きになりたい
退屈でもくだらなくても
そのうち…そのうちきっと…

世界観とリンクした音楽を楽しむ

また当時の私の好みにヒットしたのが劇中や主題歌『記憶のカケラ』などの映画全体の独特な音楽で、今作では「Rita iota(リタ・アイオウタ)」という音楽グループが手掛けていました。当時はボサノバっぽい??曲調がちょっとオシャレみたいな雰囲気があったように思います。映画を観たのが公開から少し経っていたので既に新品のCD在庫がなく、レンタルショップや中古屋を回って映画のオリジナルサントラアルバムを購入しました。

青春期ならではの感傷に浸りたい時などはウォークマンに入れておいたサントラから引っ張り出してよく聴きながら歩いていました。何に悩んでいたのか、何に満たされていなかったのかなどについては正直覚えていません。当時は今からしたら小さい(下手したらどうでもいい)物事でも壮大なテーマにして考え込んでいたような気がします。考える葦ですね。

だいたいテレ東の深夜に放送していたのをだらだらと勉強しながら居間でひとりで観ていたので、やたらと学生時代の印象が強い作品として記憶に残っています。こうして年数が経ってから改めて観るとやはりいちばん驚いたのは神木隆之介くんの成長。いくら台本とはいえ小学生の台詞じゃない語録をばんばん発言するのですが、果たして当時にそれを理解したうえで演じていたのか。チャットで誹謗中傷され傷付いた朝子に「顔も見えない相手に本気で傷付くなんて、くだらないですよ」という台詞はめちゃおとなでした。今では少年から青年へと成長した碇シンジ(映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』)の声優まで務める(声変わりする前からジブリなどでも引っ張りだこでしたが)ほど貫禄のある役者さんになったことに対してこれまた感慨深いものがあります。当時は本当にちょっと生意気で屈託のない「こども」という感覚でしたが神木くんももうアラサー。上戸彩さんも『昼顔』などで艶のある人妻を演じたり私生活ではお母さんになっていたりと時の流れは早いなぁと改めて痛感せざるを得ませんでした。さて、果たして私はあれから成長したのかどうか。

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