現代にも風習を残す霊山:山形県の山寺「立石寺」に行ってきました
先日いろいろ訳アリまして(夏の最後にどうしても山が見たくて)…
山形駅に宿を取り、松尾芭蕉の『おくのほそ道』で有名な山形県は「立石寺」に行ってまいりました。

ちょうど西日本と関東地方に台風が直撃していたので、「奥の細道湯けむりライン」なる愛称で宮城県小牛田(こごた)駅から山形県新庄駅を繋ぐ陸羽東線に乗車する夢は断念。前日に宿泊していた仙台市から目的地の山形市まで陸羽東線で遠回りして鉄旅を満喫する気満々だったのですが、既に最上川の氾濫で新庄駅より先の陸羽西線が運休になっていたので慣れない地での無茶はやめました。
と思ったらアレーッ!乗りたいよぅ!!
仙台駅構内でお土産を見ながらまごまごしていたら、とうとう東北の地にも暴風がやってまいりました。都内の状況を聞くと「雨がやばい、風がやばい」のやばいよやばいよ状態だったのである程度覚悟はしていましたが、やばいよでした。仙台駅から山形駅に行くならば仙山線ですぐだったので余裕をかまして貴重な電車を何本か見送っていた私でしたが、いよいよ空が薄黒く周囲を行き交う人々も屋内にプチ避難を始めたので流石に見切りを付け、後ろ髪を引かれる思いで改札を抜けました。
仙台駅で買ったお土産がこちら。
www.saitoseika.co.jp/


www.saitoseika.com/item/72/
※期間限定の栗味は即買いでした
www.dategyu.jp/shop/item_list?category_id=301946




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※牛タンカレーとテールスープをお買い上げ
osakana-ichiba.net/SHOP/M-20.html

※隠れた名産品の予感
zundasaryo.com/



※ずんだシェイクも飲めたので満足
(後に都内にも数店舗あると知る)
さて仙山線に乗り込んだものの、日が暮れるにつれ台風による強風の影響により徐行運転が増え、とうとうアナウンス付きで止まってしまいました。約20分遅れ?で山形駅には無事到着しましたが、待っていたのは傘も差せないレベルの暴風雨。

少々迷いながらも何とか宿泊先には着けましたが、夕飯もなく付近のコンビニもわからず若干途方に暮れてしまう。施設内にレストランがあったので夕食と朝食を慌てて付けてもらいました。
無事に夕食をいただくも、夜の10時頃には窓のガクブルも絶好調でとても外に出られたものではありません。高ランクのホテルに泊まれる身分ではないので、というかそもそも宿泊付きの旅行自体が贅沢の極みなので極力安いビジネスホテルを選んだのですが、若干の高層階だったせいもあり旧式の窓は突風に耐え切れず、侵入を許してしまった隙間風が部屋の扉を揺らしガチャガチャと音を立てるのがめちゃくちゃ怖かったです。
窓と扉と同時に鳴るのでなかなか安心して寝付けずテレビで東北ローカル番組をひたすら探す。ちょっと落ち着いた頃に窓を開けると普通に身を乗り出せる仕様になっていたのですが、調子に乗ると風に煽られて落下しかねなかったので危なっかしいことはせずに、おとなしく夏の終わりのしっとりとした風を感じていました。
―翌朝。
やはり不安定な気候のせいか落ち着いて眠れずに早朝覚醒したわたくし。テレビで台風の進路を見ていると、なぜか外から爆音のラジオ体操が開始されました。既に夏休みは終わっているはずなのに何処でやっているんだろうかと思い部屋の窓から周囲を見渡すと、地元のおばあちゃんがラジオ体操で女子会してました。

レストランで朝食もいただき(ギリギリだったためほとんど残っておらず…)荷物を整理していよいよ目標の「山寺駅」へ出発です!!!

田舎の田園風景を突き進むこと数分。体感的にゆったりした長めの乗り鉄を想定していた割にあっさりと到着しました。地方都市あるあるなのか、中心地の駅周辺はどこもビルだらけで案外似たり寄ったりなのですが、電車でちょっと移動しただけであっという間に緑一色になるのが興味深い。
簡易的な自動改札を通り、外に出ますと・・・



おお、山寺。そして巨大な川と橋がお出迎え。
久方ぶりの森羅万象。例え書類選考や面接に落ち続けても川はせせらぎ空は青い。


観光客は他にもいましたが平日だからかまばらだったためひとりで道に迷わないかちょっと心配になりましたが、ファンシーなお坊さんの案内で歩くこと数分。「奥の細道」なる文字が見えてきました。ここが山寺登山口です。さてが体力と時間との勝負です。
初の階段を上がると根本中堂が見えてきます。御朱印を求めて若干列を成しているのがさすが昨今の御朱印ブームのなせる業。せっかくなので便乗してみたかったところですが、不純な動機ではおそらく良くないのとお金がなかったので(御朱印帳と御朱印コンプだけで概算何千円)、道に沿って左奥にずんずん進みます。


東京北千住からはるばるやってきた松尾芭蕉一行のそれと同じ道を歩けるのだなあとリアル蝉の声も手伝って浸りに浸りまして、いよいよだと期待に胸膨らませウォーミングアップも万全!更に道なりに進みます。


ザ・鐘楼の隣にはその覚悟をへし折りにかかる案内図が。往復で1時間30分、そして約1000段の階段。大丈夫だろうか…。

山門で入山料大人300円を払い、近場でATMを見付けられずに現金を下ろせなかった私の財布は自販機を利用するのでやっとな程度になってしまいました。それはさておき。

山だ。ずっと身を投じたかったちょっと湿った感じの山。渓谷っぽい自然。既に夏の終わりに差し掛かっていたけれど、緑が生い茂りとても豊かだ。マイナスイオンだ。濁り切ったカラダの空気を入れ替えるべく腹式で深呼吸を繰り返します。


やがて体力的に情緒に浸る余裕もなくなり、ひたすら階段を踏むだけのポイントもありながらも、振り返れば眼下に奥行きが出てくるとテンションも上がります。


そして昇ること700余段。


重要文化財の納経堂(右が開山堂)
なんて開放的なんだ(恍惚)。
道がいろいろな所に分かれていたりするように感じまして少々キョロキョロすることもありましたが、基本的に難なく回れる地形になっていました。せっかくなのでいちばん見晴らしが良さそうな五大堂へ急ぎます。


多分いちばん期待していた風景がどんぴしゃで見られたので大満足。
思わずパノラマ撮影までしまくりましたが肉眼で体感するには敵いません。絶え間なく台風が襲来するため日本中で天気が荒れていましたが、この日は雲が少し厚い程度で風も穏やか。おかげで太陽の照り付けも抑えられて、夏の旅としては良好な気候に恵まれたと思います。
眼前に開けた大地を後ろ背に、向かうは頂上の如法堂(奥之院)です。
要所要所に手すりがあったり座れる所があったり、茶屋にお土産屋に自販機などなど至る所にあったので、途中で本当にギブ状態になっても自分のペースで登れる場所で安心できました。幸い当日のコンディションは悪くなく途中で立ち止まって水分を摂る程度の休憩で頂上まで辿り着けました。

さて、こちらの「山寺」。地域のお墓や供養もあるため、あまりバシャバシャと写真を撮るのも少々はばかられる不思議な空間でありました。


帰ってきてから知ったのですが、このお寺に「ムカサリ絵馬」が奉納されていたのですね。
涙のホラーゲーム『零〜濡れ鴉の巫女~』の世界観が大好きな私はもっとちゃんと見ておけば良かった!と後悔&悶絶したのですが、よくよく思い出すと奥之院には「××を撮影しないでください」といった注意書きが貼られていた気がして、あまり堂内はよく見ていませんでした。
もちろん参拝する分には何の問題もないと思うのですが、あまりジロジロと興味本位で見てはいけないのだろうかと思いまして、手持ちで授与されそうな御守などを一心不乱に見てました。このゲームはいわゆる「冥婚(死後婚)」をモチーフに切ない物語と恐怖の演出が組み立てられているのですが、その風習の発祥ともなるのがここ山形県(厳密には隣の天童市)だそうでして。
((((;゚Д゚))))???

誤記の「むさかり」で検索するとやたら怖い方向に持っていきたがるGoogle先生。どうやら正式名称の「ムカサリ」よりも誤記の「ムサカリ」でオカルト的なイメージが定着しているみたいですね。
未婚で亡くなった親族を思い(どうやら独身のままでは体裁が悪いという世間体的な意味もあったとかなかったとか)あの世で結婚させてあげる、というもの。
ゲーム内でラスボスの巫女が「あの人とは ともに死ぬのではなく ともに生きたかった」という呟くシーンがあります。悲しい。
霊と霊もしくは架空の人物を結婚させると考えるとなかなかオカルトテイストになりがちですが、愛する人と生きていてほしかったという親族の心中を察するになかなか考えさせられる風習であります。いろいろネットで情報を漁ってみると生きている人を一緒に描くことは禁忌という。お相手がだいしゅきホールドで三途の川の向こうに連れてっちゃうかもしれないからだそうです。
ここは水子供養や多数のお墓も所々にあり、死を忌避することなくありのままに自然が受け入れてくれるような印象を受けました。そもそも寺院内なのでお墓やお地蔵さまがあるのは当たり前なのですが、山を筆頭に自然を崇拝する傾向にあるアニミズムな日本人としては「これが輪廻というものかしら」という感覚。うーん、これがスピリチュアルなのだろうか…。
※上記を打っている時に謎の文字バグが起こり本気で恐怖に陥りました
漠然とした感動と安心感と解放感に駆られるも非情にも時間という概念だけは許してくれず、次は近くのかみのやま温泉に向かう予定だったのでこちらも後ろ髪引かれる思いで下山することにしました。
余談ですが、割と他の方はヒィヒィ言いながら歩いていましたが、私は意外とサクサクでした。上りは調子こいて一段抜かししてみたり、下りは都内の電車の乗り換えなどで鍛えられた爆速駆け降り術のお陰で(足元が湿地でぬかるみもあるので普通はやるべきではない)余裕で下山できました。正直登っている最中は「あれ、まだあるの…」と思った時もありましたが、開けた場所に出ると疲れが吹っ飛ぶ現象によりとりわけ苦だとは感じなくて済みました。



登山で考えるなら高尾山のいちばん難関なコースの方が何倍もキツイです。頂上に着くまで何度か休憩挟みましたし、高台で都心の高層ビル群が見えようが遠くの山が見えようが全然テンション上がりませんでした。頂上に向かう最後の階段は本気で吐いてブッ倒れるかと思いましたがおばあちゃんが「あと少しだから頑張れ!まだ若いんだから大丈夫よ!!」と応援してくれたので頑張って登り切りました。
この経験を誰かに話すと「高尾山もまともに登れないのか(笑)」「富士山は絶対に無理だね(真顔)」と嘲笑と侮蔑の餌食になるのでもう言いません。
出口の売店でまさかのリアル山寺の猫を発見。
山寺のおしょさんは
マリは蹴りたしマリはなし
猫をかんぶくろに押し込んで
ポンと蹴りゃニャンと鳴く
にゃーんがニャンと鳴く
よーいよい
(うろ覚え)
これは一般的な山寺を指しているそうなので立石寺とは関係ないそうですが、次々と絡んでくる観光客のせいか人馴れしていて堂々としたもんでした。安定の香箱座り。


こうして私の、平成最後の夏の終わりに山を見るという祈願も成就され、なんとか蝉の声も聞き納める事ができました。
閑かさや 岩にしみ入る 蝉の声
こんなに芭蕉の句がストンと入ってきたのは初めてかもしれません。教科書で「古池や」とか言われても、汚い水辺にいるゴツい変なカエルみたいなのしか想像できないですからね。想像力に品がないので。
かみのやま温泉についても書けたら書きたいです。

個人的にいちばん気に入った写真
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