『Ghost of Tsushima(ゴーストオブツシマ)』で英会話―A Yuriko Tale【百合之譚】

2021年4月21日  2020年11月8日 

ネタバレあります

日本の自然や文化を忠実に再現したハイグラフィックなオープンワールド、剣術だけでなく弓術や暗殺術など状況に合わせて選択できる多彩なアクションモード、そして日本語独特の詩的で情緒的な表現を必要とする寡黙なキャラクターを主人公に起用しており正直アメリカ的ではないであろう手法を用いていながら見事にやりきった感のある物語。

日本人の立場から粗探しすれば多少の違和感もあるかもしれませんが、ステレオタイプな日本文化をここまで排除した海外産のゲームは未だ稀有だと思います。

そこで気になったのがオリジナル北米版と日本語版の台詞の違い。特に日本語は曖昧な表現が却って強い印象や意味を与えることが多いので、現代英語と時代劇日本語の互換性がどの程度あるのかは大変興味があるところです。

有名な「誉れは浜で死にました」のシーンの盛り上がり方には震撼したと同時に、日英翻訳の違いについて非常に強い興味を持つきっかけになりました。

― I trained you to fight with honor.
Honor died on the beach.
The Khan deserves to suffer.

― 誉れある戦いを忘れるな
誉れは浜で死にました
ハーンの首を取るために

― You are ruled by your emotion.
I sacrificed everything I knew to save our people.
I gave them hope.
You did nothing!

― Jin...
No.
We're finished.

― 怒りに任せおって
民を守るためすべてを捨てたのです
果たして伯父上は
何を為された!

― 仁…
もう結構です

該当の会話は2:05~辺りから

作中では主人公のメインストーリーにあたる「仁之道」以外にもサブストーリーの「浮世草」がありますが、その中でも『百合之譚』の物語の流れは不覚にも涙腺を刺激されてしまいました。過去にもゲームクリア後につい涙することはありましたが、いわゆるサブクエでグロ&ゴア表現なしにここまで感情を揺さぶられることがあるのだろうか…。

ということで、乳母である百合(英語ではYuriko)が主人公の仁を仁の実父である正(英語ではKazumasa)と間違えて語るシーンの英語と日本語を比較してみます。

Yuriko:Oh…
Yuriko:Kazumasa.
Yuriko:That night…
Yuriko:You brought little Jin to me.
Yuriko:When he was so sick after all that time in the forest.
Yuriko:We had already lost Lady Sakai.

百合:ああ 正様
百合:あれは病の若様を抱えて
百合:あなた様が私の元にいらっしゃった夜のこと
百合:奥方様が亡くなった後でした

Yuriko:Kazumasa?
Yuriko:Are you listening?
Jin:I’m listening.

百合:正様 いかがなされました?
仁:聞いておる

Yuriko:I made him drink that remedy my mother taught me.
Yuriko:We sat by his side the whole night.
Yuriko:You held my hand.
Yuriko:Do you remember?
Jin:Yes.
Jin:I remember.

百合:母直伝の煎じ薬を若様に飲ませ
百合:一晩中そばにおりましたでしょう
百合:私の手を握りながら…
百合:覚えておいでですか?
仁:ああ 覚えておる

Yuriko:That night…
Yuriko:I was so scared…
Yuriko:So sad for little Jin.
Yuriko:But I was so happy.
Yuriko:Does that make me a bad person?
Jin:No.

百合:あの時 若様が苦しむ中 悲しみを覚える一方で
百合:嬉しい気持ちでございました
百合:浅ましい女でございましょう?
仁:いいや

Yuriko:When he recovered…
Yuriko:When you taught me how to ride…
Yuriko:The day we rode to the onsen.
Yuriko:The sunset was red and full.
Yuriko:That was…
Jin:That was what?
Yuriko:The best day of my life.

百合:若様の病が癒えた後
百合:あなた様から馬を習い あの温泉に行きましたね
百合:赤々と燃ゆる夕日が目の前に広がり…
百合:私はとても…
仁:申してみろ
百合:私はとても幸せでございました

Yuriko:It’s dark.
Yuriko:Kazumasa.
Yuriko:Tell me what you see.

百合:ああ… 暗い…
百合:正様 何が見えますか?

Jin:I can see…
Jin:All the way to Yarikawa.
Yuriko:I remember the war.
Yuriko:A tragedy for all the clans.
Jin:(台詞なし)

仁:鑓川への道がよく見えるぞ
百合:あの戦のせいで すべての家が不幸になりました
仁:だが滅んだわけではない

Jin:Castle Kaneda.
Yuriko:I wish you weren’t there so often.
Jin:Why do you say that?
Yuriko:You have many responsibilities.
Yuriko:I am grateful for the time we share…
Yuriko:But, I always want more.

仁:金田城
百合:いつも城におられますね
仁:確かにな
百合:多くのお務めでお忙しくて
百合:ともに過ごした楽しい時も なお物足りなく思うのです

Jin:There’s the temple in Kushi.
Jin:You can see the pagoda.
Yuriko:Every new year I pray there for you.
Yuriko:And little Jin.
Yuriko:And my family.
Jin:Jin is lucky you take such good care of him.

仁:あれは櫛の寺 塔が見える
百合:よく詣でに参っております
百合:殿と若様と家族のために
仁:よき乳母を持って仁は果報者だ

Jin:Now tell me what you see.
Jin:Yuriko?

仁:そなたには何が見える?
仁:百合?

物語は百合の儚い思慕が露わになったところで終幕。こうしてみると英語と日本語でなかなか差異があることがわかります。

個人的に響いたのが「浅ましい女でございましょう?」の台詞。英語では“Does that make me a bad person?”となっており直訳すれば「私って悪い人間でしょう?」みたいな感じになりそうですが、個人的には『浅ましい』という表現の方がしっくりきます。英単語であれば“shameful”なども使えそうですが、そうなると正との関係性を大暴露する雰囲気にもなりそう??なので難しい。

あとひとつ気になったのは「いつも城におられますね」という台詞に該当する英語の直訳が「そんなに(金田城に)いなかったらいいのに」になり、それに対して仁は“Why do you say that?”と問いかける会話。日本語では「いつも城におられますね(いつもいなかったらいいのに)」と含みを持たせる反語っぽくなっていますので、仁は百合の寂しさを知ってか知らずか「確かにな」と返答しているところに絶妙な機微を感じます。

Yurikoが“That was…”と語りを止めた時にJinはやや目に涙を浮かべた様子で“That was what?”と少々焦り気味に返答している気がしますが、日本語での仁は「申してみろ」と毅然とした態度を崩していないように見えます。同じ映像(演技は全てモーションキャプチャーを使用した役者によるもの)にもかかわらず、声のトーンや言語の違いでキャラクターの性格そのものが覆るような感覚はまた新鮮でありました。

やはり英語は主語と述語がしっかりしていて表現もストレートですが、日本語は曖昧で言葉そのものよりも裏に含まれた意味を汲み取ってくれと言わんばかりの表現が多いため外国人にとって(日本人ですらも)全てを解釈することは難儀に違いありません。ビジネスや通常の会話ではそれがデメリットになる時もありますが、文学や歌詞など表現の分野では独特の言い回しや言葉の選び方が個性や趣きを生むので欠陥言語と断ずるにはもったいない気がします。

英語版は以下の動画で発音や演技などもろもろ確認できます。ストリーマーは贅沢にも全員ゲーム内の出演者なので、質問の“Do you remember that day?”と台詞の“Do you remember?”の表現が似てしまい“I was remembering the scene…”と返答してくれますが一同微妙に該当のシーンと重ね合わせて反応するという不思議な場面もありました。正直なところ英会話のニュアンスはよくわかりませんが何となくそう感じました。

左上)典雄役のEarl T. Kim 右上)仁役のDaisuke Tsuji
下)百合(Yuriko)役のKaren Huie

フルボイスが当たり前になってきた現代では、もはやゲームでも英語や他言語が手軽に見聞きできる時代。英語は高校英語で挫折したくちですが、いろいろな媒体をきっかけに簡単なリスニングくらいはできるようになりたいです

スペルが誤っていたので一部修正しました
すみません…

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